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 以上のとおり本調査研究は、阪神・淡路大震災において地方自治体を中心とする情報システム部門におきた事実を中心に捉して、そこから汲み取ることのできる課題を検討したものである。現代科学をもってしてもなおその時期と規模を正確には予測し得ない地震という天災をテーマに置いた研究として、今回のアプローチは一つの方向性を示したものであったということができよう。
 しかし、「事実の集積と分析」は常に「そこに起きなかった出来事について述べることができない」という制約を自ら持つものである。今回の調査も「同規模の地震が昼間に起きていたらどうなっていたか」、「夏に起きていたらどうなっていたか」などの想定には答えるすべを持たない。これらについてはなお今後の課題だといえよう。
 また、情報システムの復旧に要した費用とその処理については、各地方公共団体およびコンピュータメーカーの内部事情に属するものであるため調査はなされなかったが、他の復旧経費とともに、現在もなお被災した各地方公共団体に重くのしかかっている課題である。
 最後に、本調査研究の範囲では幸いなことに、情報システムの設置場所で機器などの倒壊に巻き込まれて人が被害に遭うということはなかったが、地震対策の根本に「人命を第一優先とする」考え方が必要であることを再度確認しておきたい。
 各地方公共団体におかれては、これらの状況を踏まえた上で、本報告書に示された事実とその整理・分析の成果を元に、それぞれの立場から地震への対策を検討いただきたいと考える。

 

 

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